目利きの原点は、子どもの頃の干物の味 「豊洲仲卸村和」

■干物には様々なこだわりが詰まっている。だから奥が深いんです。

−村和さんでは昔から干物や塩干物の販売を行っていたのでしょうか

歴史を辿ると、村和は今から50年前に開業しました。もともとは、現在のような魚卵や塩干物の販売はせず、マグロや鮮魚を中心に販売をしていました。

しかし、次第に水揚げされた魚を保つための技術として佃煮などの加工品などが生まれ、やがて「開き技術」といった加工技術が誕生すると、水揚げした鮮魚を開いて天日干しにする「乾き物」(=干物)と呼ばれる加工品や一部佃煮などが作られるようになりだんだんと乾き物だけを売り、生業にする業者も見られるようになりました。

−それでは干物や塩干物はいつ頃から普及されるようになったのでしょうか。

干物や塩干物が普及し始めたのは、私の祖父の時代からでした。

乾き物を作っていた地方の生産者の間で、水揚げされた鮮魚を「塩」で処理をし、天日干しにすると美味いという風潮が生まれ、「塩干物」と呼ばれる加工品が誕生しました。

その頃から築地市場にも「塩干物」やイクラなどの「魚卵」が集まるようになり、山忠でも取り扱いを始め、今では約300種類以上も取り扱うようになりました。

−村和さんでは具体的にどういった商品を販売されているのでしょうか。

干物や塩干物をはじめ、魚卵、佃煮など約300種類取り扱っております。しかし、豊洲市場のお店では置ける商品数に制限があるため、約300種類存在する商品の中から「生産者」がこだわり持って作った商品を厳選して販売しています。商品の一部は、インターネットのデリバリーサイトで販売もしています。

私自身、商品を販売する上で、セリ人や生産者に直接、商品への「こだわり」や「特徴」を伺い、仕入れるようにしています。干物や塩干物は、一番良い時期の鮮魚を加工して作っているので、鮮魚と比べ、年間通してみても品質、価格の変動が少ない商品です。そのため、商品の良し悪しを判断する上で大切になるのが「加工方法」です。

今では加工技術が発達し、機械乾燥が主流となっており、加工に手間がかかる天日干しを行う生産者は少なくなってきています。しかし、機械乾燥、天日干しには、それぞれに良さがありますので、仕入れを行う際には、そういった情報に加え、塩に漬けている時間、使用している水、温度環境など、干物の味に関係する情報は、私自ら直接伺い、最後には食べて判断をしています。

本当に美味しい干物というものは生産者が長い時間をかけて作り上げているものなので、村和ではそういった商品の中から、お客さま毎に最適な商品を提案していきたいと思っています。

子どもの頃に食べた干物が私の原点です。

−お客さまには具体的にどういった“提案”をされているのですか。

一度お店に来ていただいたお客さまには、長くお付き合いさせていただきたいと思っています。

そのために意識していることは、まず、商品の配置や品揃えを維持すること、次に商品の価値をきちんとお客さまに説明することです。

仲卸毎で販売形態は様々ですが、村和では、量にこだわり価格を落とした商品ではなく、生産者がこだわりを持って作った商品を提供しているので、直接商品に触れていただきお客さま自身の目で判断していただきたいと思っています。そのため、商品の配置や見栄えには気を使っていて、品揃えも常に絶やさず、通りかかったお客さまが立ち止まって商品を見ていただけるよう工夫をしています。

また、お店に来ていただいたお客さまから、定番商品以外でランチやディナーに使える商品はないか、変わった商品で美味しいものはないかという相談が多く、用途に合わせ、商品毎のこだわりや特長をきちんとお伝えし、最適な商品を販売しています。なぜこの商品は安いのか、高いのか、どの部分にこだわっているのかなど、商品の価値を理解していただくことで、多少値段が張る商品でも納得していただき、購入していただいています。

ー“提案”の原点とは。

私の子どもの頃には毎朝食卓には干物が並んでおり、その頃に食べた美味い干物の味は今でも覚えています。

私の“提案”の原点である目利きの尺度は、子どもの頃に食べた干物の「焼き加減」や「塩の強さ」で、ご提案する商品の価値はそれらの今まで食べてきた干物と比べて判断してきました。お客さまに商品を提案する際に、まずはお客さまの尺度は何だろうかと考え、理解した上で、最適な商品を販売するようにしています。

自ら選んだ干物を喜んで食べてほしいから。

-新しい“提案”の形とは。

以前、築地市場の外で干物フェスタという祭りを開催したことがありました。その際に、私自ら宣伝用のポスターを考えたのですが、干物フェスタにも関わらず「ご飯」をメインにしたデザインを作りました。

干物の本当の味の良さを体感していただくためには、どうしたらいいかと考えたときに、ご飯というアプローチ方法が浮かんだからです。現在の子ども達は、「ばっかり食べ」と言って、おかずと一緒にご飯を食べるという習慣がなくなってきています。そのため、干物フェスタでは、干物そのものをただ勧めるのではなく、ご飯を主役に、箸の持ち方から干物の食べ方まで子ども達に教え、あえて一番身近なご飯から入り、最終的に干物へ結びつけるという逆の視点でのアプローチを行いました。

私自身、商品そのものを勧めるのではなく、よりお客さまに近い視点から提供していくことで、日常的に美味しい干物を体感していただきたいと思っており、これからも、そういう気持ちを持って、お客さまや消費者の皆さまに本当に美味しい干物をお届けしていきたいと思っています。

村和の干物をその日のうちにお届けします!

インタビューをしての感想は、とても実直で、干物販売という商売にかける情熱と誇りをまざまざと見せつけられた思いです。思いの詰まった「村和の干物」を豊洲市場のお店まで買いに行くのが難しい方は、こちらのサイトからご注文ください。

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